たなかむつこの分身・エッセイストがつむぎ出す、ちょっと団塊の世代の生活大好きエッセイシリーズ。

もてなしの石けん。

おしゃれな友人が泊まりに来る。おもてなし、どーする?

東京で暮らしている学生時代の親友が、泊まりに来るという。

ン十年来の友だちと、独身の頃のように泊めたり泊まったりできるのも、
お互いに子どもたちが独立した思わぬ余録。

わが家のフリールームは、いつでも宿泊大歓迎だ。
お客があると決まったら、気分が華やぐ。

二人暮らしで何となく盛り上がらない日々には、
おもてなしはビッグイベント。

「何日、いられるの?」「ソファのクロス、暖かい色のに掛け替えなくっちゃ」
夫もはりきりだす。

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何かびっくりさせたいなぁ。

私にとって、学生時代、そしてOL時代と本当に仲がよかった親友は、
センスのお手本だった。

白いシャツとジーンズの何げない組み合わせでも、
彼女が着ると、妙にかっこいいのだ。
バーゲンで買ったベーシックなセーターも、誰のよりも上等に見えた。


あの爆弾宣言からもう20数年か。

「東京へ転勤が決まった彼氏と一緒に暮らすことに決めた。
よって会社はやめる」

自分に言い聞かせるように、こうきっぱりと告げた。
そして2、3カ月後に転居したのだった。


親友がいない初めてのクリスマス。思いがけずプレゼントが届いた。

ラッピングを解くと、ボックスに切り抜いたバラの花の絵の
ワンポイントが。

開けると、バラの花のキャンドルや、バラ色のマニキュア、
バラの花柄のスカーフ…バラが好きな私へのバラづくし。

一つ一つ時間をかけて集めてくれた彼女の思いが伝わってきた。
もうずっとずっと前のことなのに、思い出すと胸がきゅんとなる。


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彼女の好きなものは…なんだっけ。
それは白。
「シンプルゴージャス」、彼女のお気に入りの言葉だった。


そうだ、シンプルゴージャスな白でもてなしてあげよう。
「ね、何か白い色をした素敵なご馳走、ないかしら?」
おいしいものの相談ならまかしとき、とばかり夫の顔が輝いた。


白い花。白いスリッパ。白いクッション。白いタオル。白い入浴剤。
そして、白い…私は石けんのマイコレクションを広げて、迷わず選んだ。
白いゲストソープ!


その晩は、夫のひらめきで創作鍋料理の試作を賞味することに。

名付けて「ホワイト・ポトフ・ア・ラ・ジャポネ」
「ん?その名前、いまいちじゃない??」とか言いながら、
鍋のフタを取ると、本当に白いお鍋だ。

じゃがいも、マッシュルーム、貝柱、ほんのり色を添えているサケ…。

どれどれ、お味は?予想通りマイルドだけれど、クリーム系ではなくて
スーッと後口が軽い。ほんのり粕汁みたいな香り。
やさしく包み込んで、引き際のきれいな味だ。

うわ、これはいける!
夫は得意満面。「酒粕と豆乳を合わせてみたら、これがなかなか…」
文句なしで決定。

思いがけないお味見まであって、冬の夜、ひととき幸福感に包まれた。


●写真の
お皿に盛ってシンプルゴージャスを楽しんだ石けんは、
京都の名旅館・俵屋旅館と花王石鹸とが共同で作り上げた
オリジナルホテルソープ。
ベルガモット、ローズなど天然香料がふんだん使われた贅沢仕様。
5p角のたっぷりサイズ。幾多のセレブがこの香りに陶酔したことか。

*遊形(京都市中京区姉小路通麩屋町東入ル)で購入したものです。

■デザイン/(株)スタジオVIS ■フォト/(株)山岸スタジオ

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