和鉄は生きている。

松笠風鈴を知っていますか? 松の小枝からぶら下がる、松ぼっくりのような不思議な風鈴。

■表紙の人

宮城県伊達藩鋳物師22代 江田 嘉茂左衛門
江田 けいさん (※けいの字は惠に草かんむり)
(宮城県登米市)


ざらりとした質感。裾の方には虫が食ったような穴が空いている。

ところが風に揺れると、思わず聴き惚れる澄んだまろやかな音…。

220年余りもの昔にあみだされたこの風鈴の製法は、

代々伊達家御用鋳物師を務めてきた江田家に

・・・・一子相伝・・・・で伝わる秘法。

風鈴は100%鉄、それも砂鉄でできた“和鉄”製だ。

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和鉄? 何だろう?

かつて日本には、世界に類を見ないほど高度で良質な鉄の塊を

つくり出す製鉄法が伝えられてきた。


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土製の炉に、砂鉄と大量の木炭を重ね入れ、

風を送り込みながら1500℃の炎の中で3日3晩溶かし続ける。

それが弥生時代から江戸時代まで続いた「たたら製鉄」だ。

和鉄があるなら、洋鉄もある?

洋鉄は大きな製鉄所で作られる大量生産の鉄のこと。

19世紀半ばに、産業革命が進む西欧からその製鉄技術が日本に伝わり、

明治以降は洋鉄が急速に普及した。


*   *   *


両者の違いは何?

古い寺などを訪れると、建物の金具や釘が錆びることなく

役目を果たしているのを目にする。

何百年も昔に作られた仏像や鉄瓶も今に伝わっている。

錆びて変質しないうえ、使い込むうちに味わいが生まれる。

そこが今の洋鉄との決定的な違いなのだとか。

「和鉄は生きている鉄なんです」

工芸家として茶の湯釜を作る江田さんは、言う。

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この松笠風鈴は、思いがけないところにも吊されていた。

かつてある日本人がアフリカ・ガボンのシュバイツァー博士の診療所を

訪ねたとき、部屋の窓に松笠風鈴が吊るされていたそうだ。

アフリカの風に、和鉄の風鈴はどんな音色を奏でたのだろう。


(取材協力)
松笠風鈴製造本舗 江雲堂
宮城県登米市登米町寺池金谷17-1
TEL&FAX 0220-52-2038

(栃木店)
TEL&FAX 0283-25-4323
http://www1.ocn.ne.jp/~wazuku/sub3.htm

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