タナカーゴ

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書家・紫舟さん(奈良2005.10月)

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奈良で活動していた頃の紫舟さん

奈良で活動していた頃の紫舟さん

今をときめく書家の紫舟さん
7年前に、当時住んでいた奈良の町家にお邪魔した。前栽(せんざい)のある玄関、板張りに変えた和室の先には坪庭。奈良公園や東大寺にも近い静かな住宅地は、いかにも書家が住むのにふさわしい佇まいであった。6歳から、厳しい書家のもとに通い筆を握った。子どもといえども、1本の線が決まるまで、夜中の12時を過ぎても家に帰してもらえない。小学校、中学校ではとれる段をすべてクリアして特待生となり、高校でも書き続けた。しかし、自分にはお手本のような字を上手に書き上げるセンスはない。そう、小学3年生の頃には感じていたのだという。

紫舟さんと知り合ったのは、取材の何年も前のこと
当時は仕事で何度も通った神戸のある企業の社員で、宣伝のセクションのスタッフであった。月刊誌や新商品のカタログなどのディレクター、デザイナ-らと4~5名で長時間のミーティングに参加。その途中で、仕事では直接関わりがなかったけれど、いつも熱い昆布茶を入れてくれた。会社を辞めたと聞いて、しばらくしてから、「こんなことをしています」と書かれた初の個展の案内状を受け取った。天満橋の小さなギャラリーで初めて見た書は、「月」をモチーフにしたさまざまな創作であった。

言葉のもつイメージをふくらませ、感じ取れる書を創作していきたい
そんな言葉を放ち、取材のすぐ後に、紫舟さんは東京に拠点を移した。「夢はハリウッド映画の題字を書くこと」。今はもう夢を超えている。

文字・言葉に改めて思うこと
文字は不思議。ただの線の集合体なのに、それを媒介にして、モノやシーンや様子、考えなどが伝わる。よく考えてみると、まるで魔法の装置ではないか。言葉には言霊(ことだま)~霊的な力~が宿っている。日本では古代からそう信じられてきたという。言葉は目の前の事象を写し取り、写し取った言葉の霊力が目の前の事象を左右するのだと。そんな言葉に、漢字をあてはめ、ひらがな、カタカナを発明して、外来語までも音表記でスムーズに取り込めるようにしてくれた先人たちの努力と能力に、改めて驚嘆する今日この頃である。

 

●奈良は墨の産地として名高いが、墨色の似合う街でもあり、また墨文字を目にする機会の多い街でもある。東大寺の二月堂だったか、半紙に書かれた「下足お断り」の達筆が今も目に浮かぶ。

■スタッフ:写真/谷内寿隆[office tag]・デザイン/岸本郁夫[元ガラモンド・現ラッシュ・デザインオフィス

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